長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出す外観 photo©Naomichi Sode
長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出すエントランスから客席を見る。 photo©Naomichi Sode
長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出す客席の のれんを側面から見る。 photo©Naomichi Sode
長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsが設計した、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」です。
創業100年の老舗の新店舗の計画です。建築家は、伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成しました。また、静的な客席に“ゆらぎ”を生み出す事も意図されました。店舗の公式ページはこちら。
創業100年を迎える老舗の食堂「ときわ食堂」の新店舗の内装計画です。
100年という伝統を守りながら次の100年に向けた新しさをつくり出すことをテーマに掲げ「暖簾(のれん)」に着目しました。
日本独自の文化である暖簾は、元来日差しや視線を遮るために出入口に設置されていたものが鎌倉時代ごろから家紋といった独自の意匠を取り入れ始め「メディア」としての機能を持つようになりました。
その文化は多様に変化しながら現代に至り、暖簾が店の営業を示すサインであることは日本人の共通認識として定着していると言えますし、「のれんを守る」という言葉があるように商売を生業とする者にとっては時間をも含んだ特別な存在となっています。
ここでは内装にも暖簾を取り入れ、モノとしての暖簾の魅力を引き出したいと考えました。
客席には10枚の大きな暖簾がレイヤー状に連続して提げられています。 一般的な暖簾は11号帆布を用いますが、内装に用いた暖簾はより厚さのある8号帆布を袋状に縫い合わせ、幅6mの非常に大きく重さのあるものとなっています。 これらの暖簾は、柔らかくそれでいて重厚感があり触れれば動くという、一般的な建材とは異なる物性を持っていて、壁ともカーテンとも違う暖簾でしかつくれない存在感を備えています。
以下の写真はクリックで拡大します
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出す外観 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出すエントランスから客席を見る。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出すのれんのレイヤーの様子。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出すのれんのレイヤーの様子。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出す壁面のデザイン。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出す客席の のれんを側面から見る。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出す客席の奥から見る。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出す客席の奥から見る。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出すのれんの連なりを見る。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出す光の質感で印象が変わる。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出すのれんの詳細。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出すのれんの詳細。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出す製造者と施主の名前が刻まれている。 photo©Naomichi Sode
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出す平面図 image©UENOA architects
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出すアクソメ図 image©UENOA architects
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出すコンセプトドローイング image©UENOA architects
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長谷川欣則+堀越ふみ江 / UENOA architectsによる、東京・千代田区の「馬喰町ときわ食堂」。創業100年の老舗の新店舗。伝統を守りつつ“次の100年に向けた新しさ”の創造を主題とし、表裏で違う色の生地を縫い合わせた寸法の異なる10枚の“のれん”で空間を構成。静的な客席に“ゆらぎ”も生み出す模型 photo©UENOA architects
以下、建築家によるテキストです。
柔らかく重厚な面
創業100年を迎える老舗の食堂「ときわ食堂」の新店舗の内装計画です。
100年という伝統を守りながら次の100年に向けた新しさをつくり出すことをテーマに掲げ「暖簾(のれん)」に着目しました。
日本独自の文化である暖簾は、元来日差しや視線を遮るために出入口に設置されていたものが鎌倉時代ごろから家紋といった独自の意匠を取り入れ始め「メディア」としての機能を持つようになりました。
その文化は多様に変化しながら現代に至り、暖簾が店の営業を示すサインであることは日本人の共通認識として定着していると言えますし、「のれんを守る」という言葉があるように商売を生業とする者にとっては時間をも含んだ特別な存在となっています。このように店先に掲げる暖簾がいくつもの意味を持つ記号であることに対して、ここでは内装にも暖簾を取り入れ、モノとしての暖簾の魅力を引き出したいと考えました。
客席には10枚の大きな暖簾がレイヤー状に連続して提げられています。 一般的な暖簾は11号帆布を用いますが、内装に用いた暖簾はより厚さのある8号帆布を袋状に縫い合わせ、幅6mの非常に大きく重さのあるものとなっています。 これらの暖簾は、柔らかくそれでいて重厚感があり触れれば動くという、一般的な建材とは異なる物性を持っていて、壁ともカーテンとも違う暖簾でしかつくれない存在感を備えています。
また、暖簾のオモテ面とウラ面には異なる色の帆布を用い、それぞれの長さは奥に行くほど長くなっています。 これにより通りから店に立ち寄ったときの印象と、席に座った時あるいは食事を終えて店を後にするときの印象が変わります。
食事をする背景として固定したものになりがちな客席にゆらぎを作り出すことを意図しており、硬く動かない壁面の塗り分けとは違い、実際に人が動くとゆったりと揺らぐ暖簾を用いることでよりおおらかなゆらぎがつくりだせるのではないかと考えました。
暖簾が持つ伝統を尊重しながら、暖簾と建築や内装への関係性の創出を試みました。
「和文化を通して日常を豊かにする」という店の理念を暖簾を通して体現できたのではないかと感じています。
■建築概要
店名:馬喰町ときわ食堂
所在地:東京都千代田区
用途:店舗(和食)
施工:天然社
協力:倉敷帆布
ロゴデザイン:ido 飯田将平
照明:ModuleX 麻田勝正
対象面積:70.41㎡
竣工:2022年6月
写真:Naomichi Sode(建物),UENOA architects(模型)