赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるウォークスルークローゼットからホールとワークスペースを見る。 photo©AKIRA NAKAMURA
赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与える左手前:キッズリビング、左奥:ベッドルーム、中央奥:リビング、右:ダイニングとキッチン photo©AKIRA NAKAMURA
赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与える手前:リビング、左奥:キッズリビング、右奥:ベッドルーム photo©AKIRA NAKAMURA
赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識が設計した、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz – an apartment renovation : Dance of Materials」です。
ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画です。建築家は、改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築しました。そして、“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えました。
“Material Waltz”は、建築リノベーションにおける装飾の舞踏を表現した計画である。
Waltzとは3拍子の優美な舞曲である。楽譜には5本の直線が等間隔に並び、その線上に音符が記号として描画されていくことで音楽となる。作曲された音楽は3つの拍子で構成されており、人間が踊ることで空間へ発展する。
このようなWaltzの創造過程は、リノベーションという現代の設計手法に対して、新しい視座を与えるものであると感じた。
楽譜に等間隔に並んだ5本の直線は、音楽に対して既に与えられた規律であり、解体された既存躯体を目の前にした時、同じ規律性を感じた。すなわち楽譜は既存建築のルール、譜面の直線は空間の性質を決定する軸線と似ている。直角に規格化された既存マンション躯体に対し、所作との応答により得られた22°の斜めの空間軸を与え、新たな譜面として個性を設計した。
22°の斜めの線を建築の軸として尊重し、空間を規律することで、建物内外の要素が音楽のように統一されつつ、単調な空間を打破して独特な雰囲気を生み出すと考えた。このコンセプトによって、建物内の間取りや配置が音楽的なリズムやハーモニーを持つように統合できると考えた。
音符は風景や人間を含めた素材の総体であり、これらを総じてMaterialと呼ぶことにした。その造形には、現代の機能性のみでは説明できないデザインを与えることで、Waltzで舞踊する人間のように“性格”を与えた。“性格”を持った新旧の素材は個性を持ち、ワンルームというひとつの空間に対してそれぞれが主張を始めると考えた。
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与える左正面:ホール、中奥:ワークスペース、右:ウォッシュルーム photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるホールとパッセージの床の詳細 photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるウォークスルークローゼットからホールとワークスペースを見る。 photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるキッチン横の収納を見る。 photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるキッチン横の収納を見る。 photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与える左手前:キッズリビング、左奥:ベッドルーム、中央奥:リビング、右:ダイニングとキッチン photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるリビング photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるリビング photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与える手前:リビング、左奥:キッズリビング、右奥:ベッドルーム photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与える手前:リビング、左奥:キッズリビング、右奥:ベッドルーム photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるベッドルーム photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるベッドルーム photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるダイニング photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるリビングの垂れ壁の詳細 photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるベッドルームの壁面の詳細 photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるキッチンの壁面の詳細 photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与えるキッズリビングの壁面の詳細 photo©AKIRA NAKAMURA
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与える平面図 image©ARED ARCHITECTSと冨永識
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赤池一仁 / ARED ARCHITECTSと冨永識による、東京・世田谷区の住戸改修「Material Waltz」。ワルツの創作過程を設計手法に取り入れた計画。改修における“装飾の舞踏”の表現を求め、既存の規則を“楽譜”と捉え“斜めの空間軸”で新たな“譜面”を構築。“音符”として素材を扱い機能を超えた造形を与える模型写真 image©ARED ARCHITECTSと冨永識
以下、建築家によるテキストです。
“性格”は装飾の基準であり、周囲の情況は対象物の“性格”によって決定される。
ANTONIO GAUDI 日記装飾論より
“Material Waltz”は、建築リノベーションにおける装飾の舞踏を表現した計画である。
Waltzとは3拍子の優美な舞曲である。楽譜には5本の直線が等間隔に並び、その線上に音符が記号として描画されていくことで音楽となる。作曲された音楽は3つの拍子で構成されており、人間が踊ることで空間へ発展する。
このようなWaltzの創造過程は、リノベーションという現代の設計手法に対して、新しい視座を与えるものであると感じた。
楽譜に等間隔に並んだ5本の直線は、音楽に対して既に与えられた規律であり、解体された既存躯体を目の前にした時、同じ規律性を感じた。すなわち楽譜は既存建築のルール、譜面の直線は空間の性質を決定する軸線と似ている。直角に規格化された既存マンション躯体に対し、所作との応答により得られた22°の斜めの空間軸を与え、新たな譜面として個性を設計した。
22°の斜めの線を建築の軸として尊重し、空間を規律することで、建物内外の要素が音楽のように統一されつつ、単調な空間を打破して独特な雰囲気を生み出すと考えた。このコンセプトによって、建物内の間取りや配置が音楽的なリズムやハーモニーを持つように統合できると考えた。
建物の機能性と美しさだけでなく、来訪者の感情や体験に訴えかけるものとなることを願った。音楽は感情を表現する媒体として広く認知されており、来訪者は建物内での生活や滞在を通じて、その感性が都市の表層から深層に移行することを願った。
音符は風景や人間を含めた素材の総体であり、これらを総じてMaterialと呼ぶことにした。その造形には、現代の機能性のみでは説明できないデザインを与えることで、Waltzで舞踊する人間のように“性格”を与えた。“性格”を持った新旧の素材は個性を持ち、ワンルームというひとつの空間に対してそれぞれが主張を始めると考えた。それらが朝・昼・夜という嫌でも発生する世界の3拍子に対して、まるでWaltzを踊るように明るく交錯することを目指した。
■建築概要
題名:Material Waltz – an apartment renovation : Dance of Materials
所在地:東京都世田谷区池尻
主用途:住宅
設計:ARED ARCHITECTS+冨永識
施工:ROOVICE
構造:RC造
階数:地上5階建3階部分
建築面積:84.16㎡
設計:2023年1月~2023年3月
工事:2023年3月~2023年7月
竣工:2023年7月
写真:AKIRA NAKAMURA